第一章【はじめに】システム開発、クリエイティブ制作、戦略支援、業務委託など、プロフェッショナルサービスを提供する企業にとって、「どのビジネスモデルで収益を上げるのか?」は事業の成否を左右する重要なことです。特に、「人月型」や「案件数型」といった受託・コンサル型モデルは、売上の構造が明快なぶん、KPIの設計や予実管理をどれだけ正確に行えるかが、収益の安定と成長に直結します。この記事では、以下の3つの代表的なビジネスモデルを取り上げ、それぞれの構造や特徴、KPIツリー、そして計算式までをわかりやすく整理して解説します。受託(人月)受託(案件数)コンサル(人月)さらに後半では、Zaimo.aiが提供するExcel事業計画テンプレートを使って、これらのモデルに合わせた予実管理をどう実践できるかについてもご紹介します。これからKPI設計を見直したい方や、事業計画の精度を上げたい方はぜひ参考にしてみてください。第二章 【各ビジネスモデルの定義と構造】受託・コンサル型と一口に言っても、契約の単位や収益の発生タイミングはモデルごとに異なります。このセクションでは、「受託(人月)」「受託(案件数)」「コンサル(人月)」の3つのモデルについて、それぞれの基本的な定義や構造を整理して見ていきましょう。1. 受託(人月)モデルこのモデルは、顧客から特定のプロジェクトや業務を受託する際に、投入されるエンジニアやコンサルタントの作業時間(人月)をベースに報酬が計算されます。定義: プロジェクトの期間と必要な人員の数を事前に見積もり、それに基づいて月ごとの費用を算出します。「1人月〇〇円」といった形で単価が設定されます。構造契約単位: 月単位や期間単位で、必要とされる人員の「人月」数に基づいて契約が締結されます。収益発生タイミング: 基本的に、作業実績に応じて月次で請求が行われ、継続的に収益が発生します。プロジェクトの進捗や作業時間の増減に応じて、月々の請求額が変動する場合があります。特徴: 顧客にとっては予算の見通しが立てやすく、企業にとっては安定的な収益が見込みやすいというメリットがあります。一方で、生産性が向上しても収益は人月に比例するため、大幅な利益増にはつながりにくいという側面もあります。2. 受託(案件数)モデルこのモデルは、個別のプロジェクトやタスクの完了に対して報酬が支払われる形態です。定義: 特定の成果物(システム開発、ウェブサイト制作、デザインなど)の完成や、特定の業務(調査レポート作成など)の完了をもって、事前に合意した報酬が支払われます。構造契約単位: プロジェクトやタスク単位で契約が締結されます。収益発生タイミング: プロジェクトの完了時、またはマイルストーン達成時など、事前に定められた成果物の納品や業務の完了に応じて報酬が支払われます。プロジェクトが長期にわたる場合は、中間金の支払いが発生することもあります。特徴: 顧客にとっては成果物が明確であるため安心感があり、企業にとっては効率的に案件をこなすことで高い利益率を追求できる可能性があります。ただし、予期せぬ仕様変更や追加作業が発生した場合、利益が圧迫されるリスクもあります。3. コンサルティング(人月)モデルこのモデルは、コンサルタントが顧客に提供する専門的な知識やアドバイスに対して、投入される時間(人月)をベースに報酬が計算されます。定義: 企業が抱える課題解決や目標達成のために、コンサルタントが戦略立案、業務改善、市場調査などのサービスを提供し、そのサービス提供にかかる時間を人月で計算します。構造契約単位: 受託(人月)モデルと同様に、月単位や期間単位で、必要とされるコンサルタントの「人月」数に基づいて契約が締結されます。収益発生タイミング: 基本的に、サービス提供実績に応じて月次で請求が行われ、継続的に収益が発生します。特徴: 顧客にとっては、継続的な支援やアドバイスを受けられるメリットがあり、企業にとっては安定した収益源となります。受託(人月)モデルと似ていますが、提供するサービスの性質(開発・制作 vs. 助言・知見提供)が異なります。モデル定義主な収益単位契約期間単価水準代表業種受託(人月)人の稼働時間に対して対価を得る人月 × 単価中〜長期中〜高SI、業務支援受託(案件数)案件単位で契約し納品して収益化件数 × 単価単発〜短期変動制作、開発コンサル(人月)高度専門職の人月稼働に対価を得る人月 × 単価中〜長期高戦略/業務コンサル参考として、あわせて「SaaS(月額課金)」や「EC(商品数)」といった他の代表的ビジネスモデルとの違いも簡単に見ていきましょう。モデル定義主な収益単位契約期間単価水準代表業種SaaS(月額課金)月額利用料を継続課金するストック型モデル月額料金 × ユーザー数長期(継続)低〜中クラウドサービス、SaaS企業EC(商品数)商品販売数に応じて収益を得る取引モデル商品単価 × 購入数単発低〜中小売、D2C、物販第三章【モデル別の特徴と成長要因】前のセクションでは、受託・コンサルティングビジネスにおける主要な契約モデルである「受託(人月)」「受託(案件数)」「コンサルティング(人月)」の基本的な定義と構造を整理しました。それぞれのモデルは、収益の発生タイミングやリスクの所在が異なるため、企業が成長を志向する上で、どのモデルを選択し、あるいは組み合わせるかによって、その戦略は大きく変わってきます。このセクションでは、各モデルが持つ固有の特徴を深掘りし、さらに、それぞれのモデルにおいて収益を拡大し、事業を成長させていくための成長要因について具体的に掘り下げていきます。自社のビジネスモデルを強化し、持続的な成長を実現するためのヒントを探っていきましょう。1. 受託(人月)モデル特徴安定的な収益: 人月単価が固定されているため、稼働している人員数と期間が明確であれば、月ごとの売上が比較的安定します。景気変動や案件の波の影響を受けにくい側面があります。稼働率の重視: 収益が人月に比例するため、いかに稼働率を高く維持するかが、収益最大化の鍵となります。人材の確保と育成: 稼働させる人材の数が直接売上につながるため、優秀な人材の確保、育成、そして定着が非常に重要です。利益率の限界: 人件費が主なコストとなるため、人月単価に大幅な上乗せがしにくい場合、利益率を高めるには効率化やコスト削減が重要になります。顧客との関係性: 長期的なプロジェクトが多く、顧客との密接なコミュニケーションを通じて信頼関係を構築しやすい傾向にあります。そのため、受託(人月)モデルの経営では、いかにして社内の全リソースの稼働率を最大化するかが常に問われます。成長要因単価アップ:高付加価値化: 特定の技術分野や業界に特化し、希少性の高いスキルや専門知識を提供することで、人月単価の向上を図ります。高品質なサービス提供: 顧客満足度を高め、リピートや紹介を促進することで、高い単価でも選ばれる存在になる。上位工程へのシフト: 要件定義やコンサルティングなど、より上流工程の業務に携わることで、単価を引き上げます。稼働率の向上:営業力強化: 継続的な案件獲得により、社員の待機期間を最小限に抑えます。社内体制の効率化: アサイン管理やプロジェクトマネジメントの最適化により、スムーズな案件移行を可能にします。組織の拡大:採用強化: 優秀な人材を継続的に採用し、組織全体の提供能力(人月数)を拡大します。教育・研修制度の充実: 社員のスキルアップを支援し、提供できるサービスの質と幅を広げます。顧客基盤の拡大:新規顧客開拓: 安定的な案件獲得のため、顧客層を広げます。クロスセル・アップセル: 既存顧客に対して、異なるサービスやより高単価なサービスを提案し、取引額を増やします。2. 受託(案件数)モデル特徴成果物志向: 契約は特定の成果物の完成に基づいているため、顧客は明確な成果を期待します。高収益の可能性: 効率的に案件をこなすことができれば、人月モデルよりも高い利益率を実現できる可能性があります。特に、テンプレート化や自動化が進めば、生産性は飛躍的に向上します。リスクとリターンの両面: 案件ごとのリスク(仕様変更、納期遅延など)を負う一方で、成功すれば大きなリターンが得られます。専門性と標準化: 特定の分野に特化し、その分野における独自のノウハウや標準化されたプロセスを持つことが強みになります。営業・マーケティングの重要性: 継続的に案件を獲得するためには、魅力的なポートフォリオの提示や効果的なマーケティングが不可欠です。そのため、受託(案件数)モデルの経営では、いかにして単位案件あたりの生産性を高め、効率的に高品質な成果物を生み出すかが常に問われます。成長要因生産性の向上:プロセスの標準化・効率化: 開発・制作プロセスを標準化し、反復作業を効率化することで、単位案件あたりのコストを削減します。自動化・ツール導入: 可能な限り自動化ツールや効率的なソフトウェアを導入し、手作業の削減を図ります。専門性の深化: 特定の分野に特化し、その分野における深い知見や技術力を磨くことで、より迅速かつ高品質な成果物を提供します。単価アップ:ブランド力の構築: 高品質な成果物を継続的に提供することで、市場におけるブランド力を確立し、高単価でも案件を受注できるようにします。差別化戦略: 他社にはない独自の技術、デザイン、サービスを提供することで、競合との差別化を図り、単価を引き上げます。付加価値の提案: 成果物だけでなく、その後の運用サポートやマーケティング戦略提案など、付加価値の高いサービスを組み合わせることで、案件単価を向上させます。案件獲得数の増加:マーケティング強化: ウェブサイト、SNS、事例紹介などを活用し、潜在顧客へのアプローチを強化します。営業チャネルの拡大: パートナーシップの構築や紹介制度の活用など、多様な営業チャネルを構築します。ポートフォリオの充実: 多様な成功事例を蓄積し、幅広い顧客ニーズに対応できることをアピールします。リピート・紹介の促進:顧客満足度の向上: 期待を超える成果物と丁寧なコミュニケーションで顧客満足度を高め、リピートや口コミでの新規獲得を促します。3. コンサル(人月)モデル特徴高単価: 専門的な知識や戦略的な知見を提供するため、一般的に受託(人月)モデルよりも単価が高く設定されます。信頼関係の構築: 顧客の経営課題に深く入り込み、長期的なパートナーとして信頼関係を構築することが成功の鍵となります。属人性が高い: コンサルタント個人のスキルや経験がサービスの質に直結するため、属人性が高く、優秀な人材の確保と育成が極めて重要です。知的資産の蓄積: 案件を通じて得られた知見やノウハウが、企業の知的資産として蓄積され、将来のサービス開発や組織力向上に貢献します。成果の可視化の難しさ: 提供するサービスが無形であるため、成果を数値で明確に示すことが難しい場合があります。そのため、コンサル(人月)モデルの経営では、いかにしてコンサルタント個々の提供価値と組織全体の知的資産を最大化し、高単価を維持しながら稼働率を最適化するかが常に問われます。成長要因コンサルタントの単価アップ:専門性の深化・高度化: 特定の業界、業務、または技術分野における比類ない専門知識や経験を蓄積し、市場価値を高めます。実績の積み重ね: 成功事例を豊富に作り、その成果を顧客に明確に示すことで、高単価を正当化します。ブランド力・知名度の向上: 著書、講演、メディア露出などを通じて、コンサルタント個人や企業のブランド力を高めます。コンサルタントの稼働率向上:営業力強化: 潜在顧客へのアプローチ、提案力の向上により、継続的に案件を獲得します。案件ポートフォリオの最適化: 複数のプロジェクトを並行して管理する能力を高め、コンサルタントの時間を有効活用します。組織の拡大と組織化されたナレッジ:優秀なコンサルタントの採用・育成: 高い専門性を持つ人材を継続的に採用し、育成することで、提供できるサービスの幅と量を広げます。ナレッジマネジメントの強化: 各プロジェクトで得られた知見やノウハウを組織内で共有・体系化し、属人性を低減しつつ、組織全体のコンサルティング能力を高めます。コンサルティングメソッドの確立: 独自のコンサルティングメソッドやフレームワークを確立し、サービスの品質を均一化・向上させます。新規サービス開発:既存顧客からの深掘り: 既存顧客の新たな課題に対するソリューションを開発し、サービス提供の範囲を広げます。新規市場開拓: 新たな業界やテーマのコンサルティングサービスを展開し、市場を拡大します。顧客との長期的な関係構築:顧客満足度とリピート率の向上: 期待を超える価値を提供し、顧客からの信頼を得ることで、長期契約や継続的な案件獲得につなげます。戦略的パートナーシップ: 顧客の経営層との深い関係を構築し、単なるコンサルタントではなく、真の戦略的パートナーとしての地位を確立します。第四章 【モデル別KPIツリーと計算ロジック】これまでのセクションでは、受託・コンサルティングビジネスにおける各モデルの基本的な特徴や、それぞれの成長に繋がる要因について掘り下げてきました。ご自身のビジネスモデルを成長させるヒントが見つかったのではないでしょうか。このセクションでは、さらに実践的な内容として、それぞれのモデルを具体的に「数字」で管理し、着実に成長させていくための「KPIツリー」と、その「計算ロジック」をご紹介します。重要な指標(KPI)を明確にし、その算出方法を理解することで、経営層はもちろん、現場の皆さんも日々の業務がどのように会社の目標に貢献しているのかを把握できるようになります。これにより、データに基づいた意思決定が可能となり、事業の持続的な成長を実現するための明確な指針となるでしょう。1. 受託(人月)KPI構造売上高 = 稼働人数 × 稼働率 × 人月単価稼働率(%)= 稼働人月数 ÷ 配属可能人月数人月単価(円)= 総売上 ÷ 総人月数1人あたり粗利 = (人月単価 − 人件費/人月)× 稼働率2. 受託(案件数)KPI構造売上高 = 契約案件数 × 平均単価 × 案件完了率契約案件数 = 新規契約数 + 継続契約数平均単価 = 総契約金額 ÷ 案件数案件完了率 = 完了案件数 ÷ 総契約案件数チャーンレート =(前月顧客 − 今月継続顧客)÷ 前月顧客3.コンサル(人月)KPI構造売上高 = 稼働人数 × 稼働率 × 平均人月単価平均人月単価 = 総売上 ÷ 総人月数稼働率(%)= 実稼働時間 ÷ 稼働可能時間チャーンレート(%)=(前月契約数 − 今月継続契約数)÷ 前月契約数1人あたり粗利 = (単価 − 人件費)× 稼働率第五章【モデル別 代表的企業】これまでは、受託・コンサルティングビジネスのモデルを理論的に見てきました。ここでは、その理解をさらに深めるため、それぞれのモデルで成功している代表的な企業を具体例としてご紹介します。モデル代表企業例受託(人月)NTTデータ、パーソルプロセス&テクノロジー、日本ユニシス(BIPROGY)、TIS株式会社、富士ソフト受託(案件数)Lancers、Accenture(案件型受託部門)、クラウドワークス、Sun(サン・アド)、カヤックコンサル(人月)ベイン・アンド・カンパニー、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、野村総研、船井総研第六章【各ビジネスモデルの事業計画テンプレートで事業計画の作成と予実管理をしよう】受託・コンサル事業では、計画と実績のズレをいち早く把握し、必要に応じて改善策を打つことが成功のカギです。しかし、一から事業計画を作り上げるには時間と労力がかかるうえ、計算ロジックの構築も複雑です。Zaimo.aiが提供している受託・コンサル特化のExcel事業計画テンプレートを使えば、あらかじめ組み込まれたロジックを利用しながら、売上の予測、予実の比較を簡単に管理できます。必要な数値(パラメータ)を入力するだけで自動計算が行われるため、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。【Zaimo.aiの事業計画テンプレート(財務モデル)の特徴】PL(損益計算書)/BS(貸借対照表)/CF(キャッシュフロー計算書)の財務三表連動モデル売上・コストロジックを階層構造化したRevenue・Costシート全入力値をParameterシートに集約し、業績ドライバーを一元管理Zaimo.ai内で売上・コストロジックをExcel関数式を編集せずにカスタマイズ可能このテンプレートを活用することで、手作業による計算ミスを回避しながら、スピーディーかつ正確な事業計画の策定と予実管理が可能になります。早速Zaimo.aiの事業計画テンプレートを取得してみましょう。Zaimo.aiの事業計画テンプレートは、下のダウンロードボタンからExcel形式でダウンロード可能です。Zaimo.aiでの事業計画テンプレートの取得方法アカウント作成は「無料ではじめる」からどうぞ。ぜひ、この機会にSaaS事業計画を効率的に構築し、予実管理の精度を高めてみてください。Zaimo.aiでのExcel事業計画の作成方法はこちらの記事をご覧くださいまた、ご利用料金などの詳細は、Zaimo.aiのサイトでご確認いただけます。最後に【どのモデルを選ぶかが、成長戦略のスタートライン】「人が価値を提供するビジネス」と一口に言っても、契約の単位(人月か、案件か、サブスクか)、単価の設計方法、稼働率の管理、チャーン(顧客離脱)の影響などによって、ビジネスモデルの構造は大きく変わってきます。だからこそ、自社のモデルにフィットしたKPI設計と事業計画のロジック構築が欠かせません。Zaimo.aiでは、こうした多様なビジネスモデルに合わせて最適化されたExcel事業計画テンプレートを提供しています。テンプレートを使えば、モデルごとの収益構造やKPIロジックをすぐに反映でき、精度の高い計画とスピーディな予実管理が実現できます。どのモデルを採用するか、あるいはどうハイブリッドさせるか——それは単なる営業戦略ではなく、企業の成長の土台をどう築くかという経営上の意思決定そのものです。ビジネスの“型”を理解し、それに合った計画を立てられる企業だけが、変化の時代でも強く、しなやかに成長していけるはずです。ぜひこの機会に、自社のビジネスモデルを見直し、Zaimo.aiのテンプレートを活用して、実行可能で説得力ある事業計画をつくってみてください。次の一手を、もっと確信を持って選べるようになります。