1. 【MRRとは?基本的な概念と定義】MRR(月次経常収益)の意味とは?MRR(Monthly Recurring Revenue)、日本語で「月次経常収益」と呼ばれる指標は、主にSaaS(Software as a Service)やサブスクリプション型ビジネスモデルで利用される収益の測定基準です。月ごとに定期的に発生する収益を示すもので、事業の成長や収益の安定性を評価するために欠かせない指標の一つです。1. MRRの定義MRRは、企業が提供するサービスや製品から、月単位で繰り返し発生する収益を計算したものです。この指標は、ビジネスの規模感や継続的な収益力を把握するための基盤となります。たとえば、以下のような収益がある場合を考えてみましょう:顧客A:¥5,000/月顧客B:¥10,000/月顧客C:¥7,500/月この場合、MRRは ¥5,000 + ¥10,000 + ¥7,500 = ¥22,500 となります。2. MRRの特徴安定収益の指標MRRは、定期的に発生する収益に焦点を当てるため、ビジネスの安定性を測る指標として非常に役立ちます。一時的な収益の増減を排除し、事業の継続的な収益力を正確に把握できます。短期的な収益の把握に最適MRRは月単位で計算されるため、四半期や年間単位ではなく、より細かい期間での収益状況を追跡するのに適しています。3. MRRが特に重要な理由MRRは、SaaSやサブスクリプション型のビジネスモデルにおいて、収益の健全性や成長を示す指標として特に重要です。このモデルでは、一度顧客を獲得すれば定期的に収益が発生するため、MRRを把握することで顧客の維持状況や事業の拡大余地を評価できます。MRRが注目される理由MRR(月次経常収益)は、SaaSやサブスクリプション型ビジネスモデルで特に重視される指標です。その収益構造や成長の安定性を示すこの指標が注目される理由は、現代のビジネス環境における収益モデルの進化と密接に関係しています。以下では、MRRが重要視される主な理由を解説します。1. 定期収益モデルの拡大近年、SaaSやサブスクリプション型サービスの普及により、定期的な収益を基盤とするビジネスモデルが急速に拡大しています。この収益モデルでは、収益の安定性と予測可能性がビジネスの成功に直結するため、月単位での収益を把握できるMRRが欠かせません。具体例:SpotifyやNetflixのような定額課金モデルの企業では、MRRを追跡することで安定的な収益基盤の成長を評価します。2. 短期的な成長の追跡が可能MRRは、月単位の収益を測定するため、短期間での成長や変化を素早く把握できます。特に、新規顧客獲得やアップセル施策が成功しているかどうかを迅速に評価するために役立ちます。具体例:新しいサービスプランを導入した際、翌月のMRR増加を確認することで、その施策の効果を定量的に評価できます。3. 事業の予測可能性を向上MRRは、将来的な収益を予測する基盤としても活用されます。月次の収益データを基に、年間収益(ARR: Annual Recurring Revenue)や中長期的な成長計画を立案しやすくなります。具体例:現在のMRRが¥1,000,000で、毎月10%成長している場合、来年度の収益を精度高く予測できます。4. 投資家へのアピールポイントMRRは、SaaS企業が投資家に事業の成長性と安定性を示す際に重要な指標となります。一時的な売上やキャンペーン収益ではなく、定期収益を基盤とするMRRは、投資家にとって信頼性の高いデータとして評価されます。具体例:VC(ベンチャーキャピタル)は、新興企業の収益予測可能性や継続課金モデルの強さを判断するために、MRRに注目します。5. 解約率(Churn Rate)との関連性定期課金型ビジネスでは、顧客の解約が事業収益に大きな影響を与えます。MRRは、解約による収益減少(解約MRR)を把握し、早期に対応するためのデータとしても重要です。具体例:特定の月に解約MRRが増加した場合、その要因を特定し、リテンション施策を迅速に実施できます。SaaSビジネスにおけるMRRの重要性MRR(月次経常収益)は、SaaS(Software as a Service)ビジネスにおいて収益の健全性と成長性を測る最も重要な指標の一つです。SaaSビジネスの特性上、継続的な収益を基盤としているため、MRRは収益の安定性を示し、将来の事業予測にも活用されます。以下では、SaaSにおいてMRRが特に重要とされる理由を解説します。1. 継続的な収益モデルを反映SaaSビジネスは、サブスクリプションによる定期的な収益を基盤とするモデルであり、一度獲得した顧客から長期間にわたって安定した収益を得られることが特徴です。MRRは、この継続的な収益の規模を把握するための基本指標です。具体例:月額料金¥5,000のサービスに100人の顧客がいる場合、MRRは¥500,000です。この数値は、顧客数が増減した際の収益影響を即座に把握するために役立ちます。2. ビジネスの成長を可視化SaaSビジネスでは、MRRを定期的に追跡することで、事業の成長率を定量的に把握できます。新規顧客の獲得、既存顧客のアップセルやクロスセルがMRRの増加に寄与するため、これらの施策の効果を評価する指標としても重要です。具体例:アップセル施策を実施して、月額プランの顧客の一部が上位プランに移行した場合、拡張MRRが増加し、成長を実感できます。3. 解約率(Churn Rate)の影響を把握顧客の解約はSaaSビジネスにおける大きな課題です。MRRは、解約による収益減少を「解約MRR」として明確に捉えることができ、リテンション施策の優先順位を決定する上で役立ちます。具体例:解約により¥50,000のMRRが減少した場合、その原因を分析し、迅速に対応することでさらなる収益減少を防ぐことが可能です。4. 将来収益の予測に活用MRRを基にした年間収益(ARR)の計算は、SaaSビジネスの成長計画や財務モデルの構築に直結します。定期的な収益が見込めることで、より正確な予測が可能となり、投資や資金調達の判断材料としても重要です。具体例:MRRが¥1,000,000で、月次成長率が10%の場合、1年後のARRを約¥31,000,000と予測できます。5. 投資家や経営陣へのアピール投資家や経営陣に対して、MRRは事業の健全性や成長性を示す説得力のあるデータです。一時的な売上ではなく、継続的に発生する収益を示すため、事業の信頼性を高める要因となります。具体例:投資家が企業価値を評価する際、安定したMRRの増加は高評価につながります。2. 【MRRの計算方法と種類】MRRの基本的な計算式MRR(月次経常収益)は、SaaSやサブスクリプション型ビジネスで、月単位の継続収益を計算するために使用されるシンプルな指標です。収益モデルに基づいて計算されるため、月次の安定収益を把握し、成長や収益性の評価に役立ちます。1. 基本的な計算式MRRは、以下の基本式で計算されます:MRR = 月額料金 × 契約顧客数この計算は、すべての顧客から得られる月額の収益を合算することで求められます。2. 計算例サービスの月額料金が¥5,000契約中の顧客が100人この場合、MRRは次のように計算されます:MRR = ¥5,000 × 100 = ¥500,000すべての顧客のプラン料金を集計して計算する場合もあります:プランA:¥3,000/月(50人)プランB:¥5,000/月(30人)プランC:¥10,000/月(20人)MRR = (¥3,000 × 50) + (¥5,000 × 30) + (¥10,000 × 20)MRR = ¥150,000 + ¥150,000 + ¥200,000MRR = ¥500,0003. 特殊な収益の取り扱い年間契約(Annual Contracts)年間契約の場合、契約金額を12で割り、月次収益として換算します。例:年間契約が¥120,000なら、MRRは¥10,000。新規顧客や解約顧客の影響新規顧客による収益は「新規MRR」、解約顧客による減少は「解約MRR」として計算されます。アップセルやダウングレードアップセル(顧客のプランアップ)による収益増加は「拡張MRR」、プランのダウングレードによる減少は「縮小MRR」として扱われます。4. MRRの分類MRRは以下のように細分化され、各要素を合算して最終的なMRRが算出されます:新規MRR:新たに獲得した顧客からの収益。拡張MRR:既存顧客のアップセルやクロスセルからの追加収益。縮小MRR:既存顧客のダウングレードによる収益減少。解約MRR:解約顧客により失われた収益。新規MRR、拡張MRR、縮小MRR、解約MRRの違いMRR(月次経常収益)は、ビジネス全体の収益状況を把握するために分解して分析されることがあります。特に、新規MRR、拡張MRR、縮小MRR、解約MRRの4つの要素に分けることで、収益の増減要因をより詳細に理解することが可能です。以下では、それぞれの定義と役割について解説します。1. 新規MRR(New MRR)定義新たに獲得した顧客からの月次収益を示します。これには、初めて契約した顧客が支払う月額料金が含まれます。役割新規MRRは、顧客獲得活動(マーケティングや営業)の成果を評価するための重要な指標です。ビジネスの成長に直結する要素といえます。具体例月額¥5,000のプランに新規で10人が契約した場合、新規MRRは:¥5,000 × 10 = ¥50,0002. 拡張MRR(Expansion MRR)定義既存顧客がプランのアップグレードや追加購入を行うことで増加した収益を示します。アップセル(上位プランへの移行)やクロスセル(関連サービスの追加購入)が含まれます。役割拡張MRRは、既存顧客基盤を活用して収益を拡大する能力を測る指標です。顧客維持だけでなく、LTV(顧客生涯価値)の向上にも寄与します。具体例月額¥10,000のプランに契約していた顧客が、月額¥15,000の上位プランに移行した場合、拡張MRRは:¥15,000 - ¥10,000 = ¥5,0003. 縮小MRR(Contraction MRR)定義既存顧客がプランをダウングレード(下位プランへの移行)した場合や、追加サービスを削減した場合に減少した収益を示します。役割縮小MRRは、顧客の価値が低下している兆候を示すため、顧客満足度やサービスの価値提案を見直す必要があることを示唆します。具体例月額¥10,000のプランに契約していた顧客が、月額¥5,000の下位プランに移行した場合、縮小MRRは:¥10,000 - ¥5,000 = ¥5,0004. 解約MRR(Churn MRR)定義解約した顧客によって失われた月次収益を示します。解約率(Churn Rate)の計算や顧客維持率を評価する際に重要な指標です。役割解約MRRは、ビジネスの収益に対する解約の影響を定量的に示します。解約が収益に与えるリスクを評価し、改善策を講じるために利用されます。具体例月額¥5,000のプランに契約していた顧客が10人解約した場合、解約MRRは:¥5,000 × 10 = ¥50,000各MRRの役割の関係性収益の全体像を把握するためには、各要素を次のように統合して計算します:総MRRの変化 = 新規MRR + 拡張MRR - 縮小MRR - 解約MRRこの関係を把握することで、収益の増減要因を明確にし、成長戦略や改善施策の立案に役立てることができます。年間契約(ARR)との関係性3. 【MRRを活用したビジネスパフォーマンスの評価】MRRとKPI(Key Performance Indicator)の関係MRR(月次経常収益)とARR(年間経常収益)は、どちらもSaaSやサブスクリプション型ビジネスにおける重要な収益指標です。MRRが月単位で収益を把握するのに対し、ARRは年間単位での収益を示します。この二つは密接に関連しており、どちらも事業の安定性や成長性を評価する上で欠かせません。以下では、MRRとARRの関係性や計算方法、役割について解説します。1. ARRの定義と計算方法ARR(Annual Recurring Revenue)は、年間ベースで得られる継続的な収益を示します。ARRは通常、次のようにMRRを基に計算されます:ARR = MRR × 12例MRRが¥1,000,000の場合、ARRは: ¥1,000,000 × 12 = ¥12,000,0002. 年間契約(Annual Contracts)の考慮年間契約を結んでいる場合、契約総額を12で割り、月次ベースに換算してMRRに含めます。これにより、年間契約収益もARRに反映されます。例年間契約で¥120,000の収益を得る場合、MRRは: ¥120,000 ÷ 12 = ¥10,000ARRは¥120,000として計上されます。3. MRRとARRの役割の違いMRRの役割MRRは短期的な収益変動や施策の効果を測定するために活用されます。例えば、アップセルや解約の影響を月次で迅速に把握できます。ARRの役割ARRは長期的な収益の安定性や成長を評価するための指標です。年間単位で収益を予測し、事業計画や投資判断の基準として使用されます。補完的な関係MRRがARRの基盤となるため、MRRの増減はARRに直結します。月次の収益状況を細かく管理することで、年間収益の見通しを立てることが可能です。4. ARRを基にした事業評価ARRは、企業の年間収益力を投資家やステークホルダーに示すための信頼性の高い指標です。特にSaaSビジネスでは、ARRが高いほど安定的な収益基盤を持つ企業と評価されます。具体例ARRが¥100,000,000の企業は、長期的な収益力があるとみなされ、資金調達や市場評価で有利になります。5. 年間契約の特性がARRとMRRに与える影響前払い契約年間契約で前払いを受け取った場合、その全額はARRに反映されますが、MRRでは月次に均等配分して計上します。これにより、短期的な収益増加の影響を排除し、継続収益の安定性を評価できます。解約の影響年間契約の場合、途中解約が発生すると、残存契約額がARRから除外されます。MRRは月次ベースで減少を記録するため、即座に収益変動を把握できます。成長率(MRR Growth Rate)の測定方法MRR(月次経常収益)の成長率(MRR Growth Rate)は、SaaSやサブスクリプション型ビジネスにおいて、収益がどの程度成長しているかを測定するための重要な指標です。この指標を用いることで、事業の成長スピードを定量的に把握し、施策の効果やビジネスの健全性を評価することができます。1. MRR Growth Rateの基本的な計算式MRR Growth Rateは、前月と当月のMRRを比較して、収益がどれだけ増加または減少したかを割合で表します。基本的な計算式は以下の通りです:MRR Growth Rate (%) = ((今月のMRR - 前月のMRR) / 前月のMRR) × 1002. 計算例前月のMRR:¥1,000,000今月のMRR:¥1,200,000この場合、MRR Growth Rateは以下のように計算されます:MRR Growth Rate (%) = ((¥1,200,000 - ¥1,000,000) / ¥1,000,000) × 100 = 20%成長率が20%であることから、1か月で収益が20%増加したとわかります。3. 種類別のMRR成長要因MRR Growth Rateをさらに詳細に把握するため、MRRの構成要素(新規MRR、拡張MRR、縮小MRR、解約MRR)に基づいた成長分析を行うことができます。新規MRR:新たに獲得した顧客による収益増加拡張MRR:アップセルやクロスセルによる既存顧客からの収益増加縮小MRR:プランのダウングレードによる収益減少解約MRR:解約による収益減少これらを分解して分析することで、成長率の背景にある要因をより明確に把握できます。4. 長期的な成長率(平均成長率)の測定1か月単位の成長率だけでなく、複数月にわたる平均成長率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)を測定することで、長期的な収益成長の傾向を把握することが可能です。CAGRの計算式は以下の通りです:CAGR (%) = ((最終月のMRR / 初月のMRR)^(1 / 期間(年単位))) - 1例:初月のMRRが¥1,000,000、12か月後のMRRが¥2,000,000の場合CAGR (%) = ((¥2,000,000 / ¥1,000,000)^(1 / 1)) - 1 = 100%5. MRR Growth Rateを活用した分析MRR Growth Rateは、以下のような状況で活用されます:新規施策の効果測定:マーケティングキャンペーンや価格変更の収益への影響を評価。解約率とのバランス評価:解約MRRが成長率に与える悪影響を早期に把握。中長期的な成長目標の設定:CAGRを用いて、長期的な収益成長計画を立案。CAC(顧客獲得コスト)やLTV(顧客生涯価値)との連動SaaSやサブスクリプション型ビジネスにおいて、MRR(月次経常収益)は単体での分析だけでなく、CAC(顧客獲得コスト)やLTV(顧客生涯価値)と連動させることで、収益性や投資効率を深く理解することができます。これらの指標を組み合わせて分析することで、事業の健全性や成長戦略を効果的に評価できます。1. CAC(顧客獲得コスト)との連動CACの定義CACは、新規顧客を1人獲得するために必要なコストを示します。広告費、営業コスト、マーケティング費用などが含まれます。計算式: CAC = 顧客獲得のためにかかった総コスト ÷ 獲得した顧客数CACとMRRの関係CACが高い場合、新規顧客が獲得できても、MRRがそれに見合わない場合があります。MRRの増加がCACを上回るかどうかを評価することで、顧客獲得施策の効率性を判断できます。具体例1人の顧客を獲得するために10,000円(CAC)がかかり、その顧客が月額5,000円のプランに加入した場合:MRR = 5,000円CACの回収に必要な期間(回収期間) = CAC ÷ MRR = 10,000 ÷ 5,000 = 2か月2か月以内に解約される顧客が多ければ、事業の収益性に課題があります。2. LTV(顧客生涯価値)との連動LTVの定義LTVは、1人の顧客が生涯にわたり企業にもたらす収益の総額を示します。計算式: LTV = 平均月次収益(MRR) × 平均顧客存続期間(月)LTVとMRRの関係MRRはLTVを計算する際の基本的な構成要素です。LTVが高いほど、顧客が企業にもたらす収益が大きいことを示し、長期的な事業の健全性を示す指標になります。具体例平均月次収益(MRR)が5,000円で、顧客の平均存続期間が12か月の場合:LTV = 5,000円 × 12か月 = 60,000円3. CACとLTVのバランス評価CACとLTVを比較することで、顧客獲得にかけたコストが顧客からの収益に見合っているかを判断できます。指標CAC ÷ LTV1未満:収益性が高い(投資効率が良い)1以上:コスト過多(改善が必要)具体例CACが10,000円、LTVが60,000円の場合:CAC ÷ LTV = 10,000 ÷ 60,000 = 0.167この場合、顧客獲得コストはLTVの16.7%であり、収益性は高いと判断されます。4. 施策の最適化に役立つ連動分析MRR成長を促進する方法CACを低減しながら新規顧客を増やす(広告費削減や効率的なマーケティング)。LTVを向上させるためにリテンション施策を強化(顧客満足度向上、解約率低下)。解約の影響を把握LTVが低下している場合、解約率(Churn Rate)を見直し、MRRの安定化を図る必要があります。Zaimo.aiの関連機能の紹介Zaimo.aiでは売上高やコストを詳細にブレイクダウンし、KPIベースでの事業計画作成や予実管理が可能です。MRRの管理や分析にも活用できるので、ぜひご検討ください。Zaimo.aiのご利用はこちらからまとめMRRは、サブスクリプションビジネスの健全性と成長性を測る重要な指標です。適切に管理・活用することで、事業の安定性向上と戦略的な成長が可能になります。Zaimo.aiを活用すれば、MRRを含む重要指標の効率的な管理が可能です。ぜひ、あなたのビジネスでMRRを活用し、持続的な成長を実現してください。